Distillation(蒸留)
カテゴリー:カルヴァドス製造の核心工程(原酒を生むプロセス)
■ 定義
Distillation(蒸留)とは、発酵してできたシードルを加熱し、
アルコールと芳香成分を選択的に抽出して濃縮する工程です。
カルヴァドス造りの中心となる重要プロセスで、
蒸留方法の違いが味わいの個性を大きく左右します。
■ 主な蒸留方法
- ① 蒸留単式(Single Distillation / アランビック・ア・ディスティル)
・一度だけ行う蒸留方法
・フレッシュで果実味が残るスタイル
・AOC Domfrontais と AOC Calvados(広域)で多用 - ② 二回蒸留(Double Distillation / アランビック・シャラント)
・二度の蒸留でより純度と芳香が増す
・複雑で芳醇、まろやかで深みが生まれる
・AOC Pays d’Auge では二回蒸留が義務
■ 蒸留のプロセス
- ① シードルを加熱:アルコールが先に蒸発
- ② 蒸気を冷却:アルコールと香り成分が液体として凝縮
- ③ 分留:ヘッド(初留)/ハート(中心)/テール(後留)を分ける
- ④ ハートのみを採用:これがカルヴァドスの原酒となる
■ 蒸留で決まる味わいの特徴
- 単式蒸留:りんごの個性がダイレクト。軽快でフルーティー。
- 二回蒸留:繊細で上品。樽熟成との相性が良く高級レンジ向き。
- 蒸留温度やスピードにより香りの“抜け”や“残り”が変化
- 蒸留家(ディスティレーター)の技術が味を決定づける
■ 蒸留と AOC ルール
- AOC Pays d’Auge:二回蒸留が義務
- AOC Domfrontais:単式蒸留が中心
- AOC Calvados(広域):単式 or 二回蒸留どちらも可
■ 背景
ノルマンディーの蒸留文化は中世まで遡り、
蒸留器(アランビック)は時に家宝として受け継がれてきました。
カルヴァドスの香り・強さ・個性は蒸留工程で大きく形作られ、
その後の熟成を経て完成へと向かいます。
Distillation は、
“カルヴァドスの魂を生む瞬間” とも呼ばれる非常に重要な工程です。